親知らずは口の中の一番奥にある歯で、「第三大臼歯」「智歯(ちし)」とも呼ばれています。
永久歯のなかでもっとも遅く成長し、斜め向きまたは横向きに向きに生えているものは虫歯や歯周病を引き起こすことがあります。
虫歯や歯周病の原因になる、または歯として正しく機能しない親知らずは抜歯を検討することになりますが、すべての親知らずが抜歯の対象になるのでしょうか。
この記事では、親知らずの抜歯が必要なケースと不要なケース、抜歯にかかる費用について紹介します。
即日抜歯や抜歯後の注意点もぜひ参考にしてください。
抜歯が必要な親知らずとは?
抜歯を必要とする親知らずは、次の4つのタイプです。
【4つのタイプ】
- 痛みや腫れがある
- 歯並びに影響が出ている
- 斜めや横向きに生えている
- 手前の歯に虫歯がある
歯並びへの影響や痛みが出ている歯については、抜歯を検討することになります。
ただし、そのままにしていても問題がない歯は、抜歯を推奨されない可能性もあります。
痛みや腫れがある
親知らずが虫歯や歯周病にかかって痛みや腫れがあるときは、抜歯が選択肢となります。
歯と歯茎を治療しても、歯が生えているかぎり再発のおそれがあるためです。
親知らず自身が生えてくるときにも、隣の歯を強く押すために痛みを感じることがあります。
たとえば、水平埋伏歯のように真横に生えてくる歯は横向きの力が隣の臼歯にかかるため、痛みを感じることがあります。
このような場合、痛みの解消には抜歯が選択肢となります。
歯並びに影響が出ている
親知らずの生え方が歯並びに影響を与えるときも、抜歯を検討します。
たとえば横向きの状態に生えている水平埋伏歯は、本来下から上へと力をかけるところ、横向きに力をかけて生えようとするために、隣の第二大臼歯を押してしまうのです。
親知らずに押された第二大臼歯は少しずつ第一大臼歯の方向へずれていきます。
このため、上下左右の歯がかみ合わず、前歯の方に向かって歯の位置がずれていき、重なり合う歯が出てきます。
親知らずによってかみ合わせに影響を与える場合は抜歯を検討しましょう。
斜めや横向きに生えている
斜めに生えている歯は「半埋伏歯(はんまいふくし)」と呼ばれます。
完全に横向きになった水平埋伏歯と違い、半埋伏歯は歯冠の一部が歯茎の表面に出ています。
一部分でも歯が出ていると、虫歯菌が歯冠を溶かして虫歯が発生することがあります。
また、歯茎と歯のすき間に歯垢が溜まると歯石としてこびりつき、そこから歯周炎や歯周病にかかることもあります。
ブラッシングなどのケアが行き届きにくい生え方の親知らずは、抜歯が必要になる可能性があります。
医師とよく相談し、治療を検討してください。
手前の歯に虫歯がある
親知らずの手前、第二大臼歯に虫歯がある場合は、その歯だけではなく親知らずも虫歯にかかるおそれがあります。
虫歯は自然に治癒しない病気です。菌を取り除くためには患部を削って詰め物や被せ物をしなければなりません。
手前の歯が虫歯にかかったときはその部位を削る必要がありますが、親知らずが原因で虫歯になっているときは、親知らずを抜歯して虫歯の原因ごと取り除きます。
ただし、親知らずが原因ではない虫歯や、親知らずがきれいに生えており隣の歯に影響しないケースでは抜歯の必要はありません。
関連記事:親知らずの歯茎が腫れているときの対処法と放置することのリスク
こんな親知らずは抜かなくても大丈夫!
次に、抜かなくても良い親知らずについてみていきましょう。
【抜かなくても良い親知らず】
- 痛みや腫れがない
- まっすぐに生えている
まっすぐ生えていて他の歯と同じようにものを噛める親知らずは、そのまま使い続けられます。
ブラッシングもしっかりとできてケアが行き届く歯であれば、無理に抜歯を勧められる心配はありません。
痛みや腫れのない親知らずも、トラブルを起こす心配がなければそのまま残せる可能性があります。
関連記事:親知らずが痛いときはどうすればいい?すぐにできる応急処置と注意点
親知らずの抜歯にかかる費用
親知らずの抜歯にかかる費用は、3割負担の保険治療で1本あたり約2,000円(税込)が目安です。
一度に複数の親知らずを処置するときは外科的治療が必要になり、医院によっては入院をしなければならないため、数万円の金額になることもあります。
初診時には初診料として1,000円(税込)程度かかり、レントゲンやCT撮影では約3,000〜4,000円(税込)かかります。
一般的に親知らずの抜歯では局所麻酔や笑気麻酔が使われますが、「静脈内鎮静法」は保険適用以外に自費診療の場合があり、自費診療は費用が高額になります。
ケース①普通抜歯
まっすぐ歯を引き抜く普通抜歯では、3割負担の保険治療で約3,000円(税込)が目安です。
埋伏歯のように難易度の高い抜歯ではないため、麻酔や抗生物質を処方してもそれほど費用はかかりません。
普通抜歯1本+埋伏歯2本など、普通抜歯以外のタイプを抜歯する場合は追加費用がかかります。
ケース②埋伏歯
埋伏歯は、歯の一部または全部が歯茎に埋もれている歯のことです。
歯茎や骨の中に埋もれている場合は外科的処置が必要になるため、通常の抜歯よりも時間がかかり、処置費用も割高になります。
3割負担の保険治療で約5,000円(税込)以内が目安です(詳しい料金は治療前に主治医とご相談ください)。
ケース③難抜歯
親知らずが横向きになった状態で歯茎に埋もれているケースや、骨の奥にしっかりと埋もれているときには、難抜歯(なんばっし)となります。
難抜歯は通常の抜歯よりも処置が複雑になるため、3割負担の保険治療で10,000円(税込)程度が目安になります。
親知らずの即日抜歯はできる?
歯医者を受診した日に抜歯する「即日抜歯」は、歯医者によっては対応していない場合があるため、事前に確認が必要です。
即日抜歯が可能な医院では事前にレントゲンやCTの撮影が必要になるため、抜歯のみの料金に加えて画像診断や初診料がかかります。
初診で即日抜歯を行うケースは、来院当日に精密検査を受けて治療計画を立てる必要があるため、歯医者・患者さまそれぞれにリスクがあります。
そのため、初診時の即日抜歯は推奨されていません。
歯が動揺していて抜け落ちそうなケースや、歯根破折を起こしているときには即日で抜歯処置を行う可能性があります。
しかし、正常に生えた歯がものを噛む歯として機能している場合は、即日抜歯を勧められることはありません。
親知らずの抜歯は顎の骨に影響を与えるリスクがあるため、基本的に即日で抜くことはありません。
事前に精密検査を行ってから治療の方向性を検討します。
治療計画が決まれば2回目の来院で抜歯となります。
難抜歯になる親知らずは上顎洞と繋がったり神経を損傷したりするおそれがあり、かかりつけ医で対応できないことがあります。
水平埋伏歯のように難易度の高い親知らずは、口腔外科などの専門医で抜歯する必要があるため、即日抜歯はできません。
親知らず抜歯後の注意点
親知らずを抜歯した後は、次の点に注意してください。
【注意点】
- 抗生物質をすべて服用する
- 抜歯後数日は弱いうがいにとどめる
- 抜歯した箇所に触れない・刺激しない
- 硬いものや尖ったものを食べない
- 刺激物や熱いものを食べない
- 痛みやトラブルは我慢せず連絡する
抜歯の直後は傷口が開いているため、抗生物質を用法・用量どおりに服用してください。
傷口が塞がるまでは抜歯した箇所に触れないように注意し、歯ブラシや舌が当たらないように注意します。
刺激のある食べ物や飲み物、熱い飲食物を口にしないようにしましょう。
抜歯後はしばらく出血があり、歯を抜いた場所に血が固まって「血餅(けっぺい)」と呼ばれるフタになります。
勢いよくうがいをするとこのフタが剥がれて、抜歯をした穴が塞がらずに骨が露出する「ドライソケット」の原因になるため、血が固まるまでは弱いうがいにとどめてください。
「安静に過ごしているにもかかわらず強い痛みがある」または「出血が止まらない」というような場合は、すぐにかかりつけの歯医者に連絡し、状況を伝えてください。
親知らずの抜歯で迷ったときは専門医へ相談
今回は親知らずの抜歯について、必要・不要なケースと抜歯にかかる費用、抜歯後の注意点を紹介しました。
親知らずが歯として機能し、セルフケアが十分にできれば、抜歯の必要はありません。
反対に、埋伏歯・セルフケアが難しい・歯並びがずれるおそれがあるときは、抜歯を検討したほうが良いかもしれません。
抜歯そのものは高額な治療ではありませんが、親知らずを抜くべきか迷ったときはお口の中の状態や親知らずと歯周組織の位置をよく確認する必要があります。
抜歯を考えている方は、信頼のできる歯科医にご相談ください。
千歳烏山駅の「オールインデンタルクリニック」では、患者様お一人おひとりの状態を丁寧に診察し、最適な治療プランを提案させていただきます。歯周病の予防にも力を入れており、事前のケアを提案させていただけます。歯に関する不安や疑問がありましたら、どうぞお気軽にお立ち寄りください。私たちは、患者様の不安にしっかりと向き合い、丁寧にカウンセリングを行い、安心して治療に臨んでいただける環境づくりを心掛けています。
当院は千歳烏山駅から徒歩30秒の便利な立地にあり、平日は20時まで開院しており、急な歯の痛みなどにも対応可能です。当日アポイントも承っておりますので、お困りの際はぜひご連絡ください。特に口腔外科認定医が行う外科的治療や虫歯・歯周病などの一般診療が得意な地域密着型の歯科医院で、多くの患者様にご満足いただいております。
オールインデンタルクリニックでは、皆様のお越しをスタッフ一同お待ちしております。
この記事を監修した人
日本
口腔外科学会
認定医
木下 恵泉
鶴見大学卒業後、年 町田市民病院に入職。また、赤十字病院や東京医科歯科大学顎顔面外科の勤務を経て、2018年に森の泉歯科の院長に就任。2023年3月に「オールインデンタルクリニック」を開院。
千歳烏山地区の人のために、自分のことのように相手のことを真剣に考え、1人1人に合わせた最善の治療を提案している。
略歴
2005年3月 鶴見大学 卒業
2005~2006年 町田市民病院(歯科口腔外科) 勤務
2006~2007年 武蔵野赤十字病院(歯科口腔外科) 勤務
2007~2011年 東京医科歯科大学顎顔面外科(歯科口腔外科) 勤務
2011~2018年 けやき歯科 勤務
2018年5月 森の泉歯科 院長就任
現在に至る