
親知らずは「智歯(ちし)」とも呼ばれ、上下左右4つの歯列の奥に位置する永久歯です。
本来は臼歯としてものを飲み込みやすいサイズに砕き、すりつぶす機能がありますが、歯として機能せず虫歯や歯周病のリスクがある場合には、抜歯が検討されます。
ブラッシングやフロスが届きにくい、または歯茎の下に潜り込んだ「埋伏歯」は、セルフケアが不十分になりやすいデメリットがあります。
この記事では、親知らずのある場所でなぜ歯茎が痛くなるのかを紹介します。
智歯周囲炎の症状と処置、抜歯が必要なケースも取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
親知らずでなぜ歯茎が痛くなる?
親知らずが痛いと感じるときは、歯または歯茎のトラブルが多くみられます。
歯が痛いときは虫歯、歯茎のみが痛むときは、「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」が考えられます。
親知らずが生えてくるとき、または成長中に動いたときも隣り合う歯や神経を圧迫するため痛みを感じます。
ここからは、智歯周囲炎の症状について詳しくみていきましょう。
智歯周囲炎とは?
智歯周囲炎は、親知らずが原因となって周囲の歯茎に炎症が起こるトラブルです。
親知らずは歯の一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくく磨き残しや食べものが詰まりやすい歯です。
丁寧にケアをしなければ歯垢汚れが蓄積し、カルシウムなどの成分によって歯垢が硬化して歯石になってしまいます。
歯垢や歯石には、口腔内の常在菌である歯周病菌が大量に含まれています。
嫌気性の細菌のため汚れの塊の中を好んで増殖し、その結果親知らずのまわりで炎症が発生します。
関連記事:親知らずが痛いときはどうすればいい?すぐにできる応急処置と注意点
智歯周囲炎の症状
智歯周囲炎にかかったときの具体的な症状は次のとおりです。
【具体的な症状】
- 歯茎がぶよぶよする
- 歯茎から膿が出る
- 周りの歯茎が腫れる
智歯周囲炎は歯周炎の一種で、歯茎の腫れ・痛みなどが発生します。
3つの症状を詳しくみていきましょう。
歯茎がぶよぶよする
炎症が起きると、歯茎に膿が溜まりぶよぶよとした手触りになることがあります。
本来の歯茎は張りがあり引き締まっていますが、中に膿が溜まると膨らみが出て、張りが失われていきます。
痛みがないからといって放置していると、膿や血液が口腔内に染み出して口臭が悪化したり、炎症がさらに進行して痛みが出たりといったトラブルに繋がることもあります。
歯茎の見た目が悪化してきたときは、そのままにせず早期に治療を開始しましょう。
関連記事:歯周病で歯がグラグラに!進行度に応じた治療方法をご紹介
歯茎から膿が出る
ぶよぶよとした歯茎の中には膿が溜まっています。
これは、増殖した歯周病菌と体内の免疫細胞が戦った結果、膿となって溜まったものです。
歯周病菌は自然に消失することはありません。
お口の中が不衛生なまま、治療をしないかぎりは増殖を続けていきます。
膿が溜まってくると歯茎から外に染み出し、おかしな味や臭いがしてきます。
膿が出てきたときは放置せず、歯茎の状態に応じて治療を進めていくことが大切です。
周りの歯茎が腫れる
智歯周囲炎は親知らずに表れる歯周炎の症状ですが、親知らず以外の歯にも病気が広がってしまう場合があります。
智歯周囲炎を放置していると、親知らずの隣にある歯(第二大臼歯)や上または下にある親知らずなど、周囲の歯茎に歯周病菌が移っていき、腫れが広がります。
本来健康だった歯茎に炎症が広がると、その歯茎も治療をしなければなりません。
放置するほど歯茎へのダメージは広がっていき、治療にかかる期間や費用も増えていきます。
智歯周囲炎は発見したあとすぐに治療することが大切です。
関連記事:歯周病の急性症状とはどんなトラブル?応急処置と注意したいポイント
智歯周囲炎をほっておくと?
智歯周囲炎は、歯周炎と同じく初期症状でほとんど痛みがありません。
親知らずは歯の一番奥にあるため炎症を起こしていても気づきにくく、放置されやすい症状です。
症状が進んでくると炎症の程度や範囲が広がり、腫れや痛みがしっかりと出てきます。
また、親知らずのまわりの歯茎が腫れてきて、智歯周囲炎に加えて歯周炎や歯周病を併発するケースもあります。
細菌が口の中に留まり続けることで、虫歯のリスクも高くなります。
歯肉の腫れに加えて虫歯にかかったり、歯垢が硬化して歯石になり親知らずの奥深くに入り込んだりと、症状が拡大していきます。
歯茎が腫れてくると、奥歯に違和感が出てきます。
周囲の組織にも炎症が広がって頬が腫れ、増殖した細菌が喉へ回って風邪をひいたときのような痛みや咳が出たりすることもあります。
智歯周囲炎の処置
智歯周囲炎が起きたときの処置は、歯周炎や歯周病への処置と基本的には同じです。
【歯周炎や歯周病への処置の基本的】
- 抗生剤の内服
- 消毒措置
- レーザー照射
処置の方法を詳しくみていきましょう。
抗生剤を内服する
歯周炎は歯性感染症の一種です。
細菌による影響を受けている状態のため、軽微な初期症状から進行してしまった場合は、抗生剤の内服が必要です。
歯肉に消毒措置を行いながら、細菌の活動を抑制するための抗生剤を内服します。
症状が進行する中等度以降は大きく腫れる場合があり、抗生剤の服薬だけで治癒しないときには、抗菌薬の点滴が行われます。
消毒措置を行う
歯周病は細菌による感染症です。
歯垢や歯石を取り除いてもまだ患部には細菌が残っているため、歯周ポケットや歯と歯茎のすき間に残った汚れなどを消毒用の薬剤で洗浄します。
汚れが歯肉の内側や歯根まで入り込んでいる場合は歯肉を切開しなければなりませんが、歯肉の上部や縁、歯周ポケットの上部にある細菌は薬剤などで除菌できます。
回数を重ねて除菌を繰り返しながら症状の経過を観察し、治療を続けることで効果が期待できるでしょう。
レーザーを照射する
レーザー治療は、歯科用レーザーを患部に照射して症状の改善を図る方法です。
智歯周囲炎に対するレーザー治療には、PDT(フォトダイナミックセラピー:光線力学療法)と呼ばれる化学反応を利用したレーザー治療が行われるほか、レーザー光線によって歯肉を切開する方法も行われています。
PDTでは、専用のジェルを塗った場所にレーザーを当てると化学反応が起き、歯周病菌を殺菌することができます。
治療の際に強い痛みがなく、歯科治療以外の領域でも使用されている方法です。
すでに歯石が奥まで入り込んでいる場合は、歯肉を切開して歯石を取り除かなければなりません。
レーザーをメスとして使用することで患部への侵襲が抑えられ、治療後の治りが良くなるメリットがあります。
歯石や歯垢を除去する際、粘膜が傷ついたところから菌が侵入する場合があります。
抵抗力が落ちている方は、特に感染症に注意しなければなりません。
レーザーはそれ自体が殺菌に用いられます。
患部への菌の侵入を防いで、清潔に治療を進められる方法です。
再発を繰り返すのであれば抜歯が必要!
智歯周囲炎は歯周病菌によって起こる炎症です。
細菌を取り除けば炎症は収まりますが、何度も再発するようであれば抜歯を検討することになります。
抜歯が必要なケースは「歯の一部や半分が埋まっている場合」と、「歯が完全に埋まっている場合」の2つです。
歯の一部や半分が埋まっている場合
親知らずの一部または半分が埋伏歯(まいふくし)として歯茎に埋もれている場合もあります。
そのようなケースでは、埋まっている部分も含めて外に取り出さなければ、歯茎の痛みに根本的に対処することはできません。
埋伏歯は歯茎に埋もれた部分がある歯のことで、隣の歯との間に深い歯周ポケットができることもあります。
歯周ポケットが深くなると、歯周病菌が入り込んで増殖し、智歯周囲炎が発生します。
関連記事:親知らずは抜歯が必要?抜歯不要なケースや抜歯後の注意点も紹介
歯が完全に埋まっている場合
歯が横を向いた状態で歯茎の下に埋もれる「水平埋伏智歯」「水平埋伏歯」は、親知らずが歯茎に覆われた状態です。
親知らずそのものよりも、隣にある第二大臼歯との間に深い歯周ポケットができ、そこに歯周炎が発生する可能性があります。
深い歯周ポケットに何度も炎症が起きるときは、消毒や歯石の除去だけでは根本的な対処にならないため、水平に埋伏した親知らずを抜歯しなければなりません。
親知らずの歯茎が痛いときは歯医者を受診しよう
今回は、親知らずのまわりに炎症が発生する「智歯周囲炎」の概要と症状、処置の方法について紹介しました。
一般的な歯周病とは異なり、智歯周囲炎は初期症状に気づきにくい特徴があります。
痛みがないからといってそのまま放置していると、親知らずまわりとその上下や隣の歯に細菌が広がるおそれがあるため、早期に対処することが大切です。
痛みや腫れがあるときはすぐに歯医者を受診するべきですが、定期健診でお口の中の状態をチェックし、早期に症状を発見することも大切です。
また、炎症を治療しても再発を繰り返すようであれば、親知らずの抜歯を検討しましょう。
千歳烏山駅の「オールインデンタルクリニック」では、患者様お一人おひとりの状態を丁寧に診察し、最適な治療プランを提案させていただきます。歯周病の予防にも力を入れており、事前のケアを提案させていただけます。歯に関する不安や疑問がありましたら、どうぞお気軽にお立ち寄りください。私たちは、患者様の不安にしっかりと向き合い、丁寧にカウンセリングを行い、安心して治療に臨んでいただける環境づくりを心掛けています。
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オールインデンタルクリニックでは、皆様のお越しをスタッフ一同お待ちしております。
この記事を監修した人
日本
口腔外科学会
認定医


木下 恵泉
鶴見大学卒業後、年 町田市民病院に入職。また、赤十字病院や東京医科歯科大学顎顔面外科の勤務を経て、2018年に森の泉歯科の院長に就任。2023年3月に「オールインデンタルクリニック」を開院。
千歳烏山地区の人のために、自分のことのように相手のことを真剣に考え、1人1人に合わせた最善の治療を提案している。
略歴
2005年3月 鶴見大学 卒業
2005~2006年 町田市民病院(歯科口腔外科) 勤務
2006~2007年 武蔵野赤十字病院(歯科口腔外科) 勤務
2007~2011年 東京医科歯科大学顎顔面外科(歯科口腔外科) 勤務
2011~2018年 けやき歯科 勤務
2018年5月 森の泉歯科 院長就任
現在に至る